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「蒼い山」への出発

さて、僕らの冒険の旅の始まりです。

「音楽を軸とした旅行記」のようなものをシェアしたい…というアイディアを長年温めていましたが、これが徐々にアルバム制作プロジェクトへと進化しました。

その経緯は3年ほど前、九州の田舎で⼩さなローカル電⾞に揺られていた時のこと。⾞窓の枠に溢れる光の先で、木が茂る⼭々が蒼いシルエットを描いていくのが見えました。その時、僕の頭の中で、ある言葉がはっきりと響いたのです。

「レ・モンターニュ・ブルー、蒼い⼭…」

その時は【蒼い山】という名の曲を書きたいと思いました。森・霧・水・空に舞う雲を語るような、自然の中で感じられる不思議で優しい癒しの力を描くような、その味わいを再現するような、そんな曲を書きたいと…。しかし曲作りは未完成のまま【蒼い山】の言葉だけが残り、水・木々・山・鳥・花に耳を傾け、自然とそこに住むいのちに寄り添った関係の中で曲作りをする、アルバム制作のプロジェクト・タイトルとなったのです。

旅先でよく新曲を作り、毎日のように自然の中にいてインスピレーションを受けている僕にとって、このプロジェクトは分身のようなもの。コロナ禍のこの奇異なご時世の中で、自然との繋がりを結び直そうとする試みが生まれたことも、もちろん偶然ではありません。

よって、このプロジェクトは僕の今までの曲作りの延長線上にあります。形が多少違うのは、数カ国で創作レジダンス(滞在)をし、(中には自然と強い繋がりを持っている人もいる)友人アーティスト達とのコラボレーションを提案することです。音楽コラボを中心に、プロジェクトを彩る美術系アーティストとのコラボも予定しています。その様子はこれからこのサイトでご紹介していきます。

何が生れ、何が残るのかは、まだ未知の世界。Dick Annegarnが「歌(シャンソン)とは漢詩の如く、完全なる最小の形だ」と言っていましたが、全く同意見の僕は、この「完全なる最小」のためには妥協はない、と思っています。兎にも角にも、このサイトやSNSで創作の旅の過程を、アルバムではそれ以外も、皆さんにシェアしていきます。

まずは今春、今までに書いた曲でお気に入りの4曲を挿入したE.P(ミニアルバム)「Hirondelle/ツバメ」を、アルバムに先駆けてデジタル・リリースします。また、最近書いた曲や、長い間引き出しにしまったままの作りかけの曲などもご紹介していくつもりです。

そしてこのプロジェクトは、自粛ばかりの一年を経た今の新軌道。今だからこそ、皆さんと再び繋がりたいという願い、シェアしながら善き種を撒く志で旅しようという願いを、強く感じています。アルバムの創作過程、旅路を描いたポエティック・音楽的・視覚的な地図、ポートレートなど、沈黙の中で様々なビジョンを育ててきました。

プロジェクト大半は武田洋子が主要パートナーとして同伴します。ご存じの方も多いと思いますが、長い間僕と共演しているヴァイオリニストで、日本でのオーガナイザーとしても重要な人です。

さて、プロジェクト・タイトルの[レ・モンターニュ・ブルー/蒼い山]に戻りますが、特に自然の事に関して「ブルー」よりも「グリーン」ととれる、「青」や「蒼」の日本語表現は正に適切です。この言葉を発する時、頭に浮かぶことの一つは、道元禅師の「山水経」。その中に「青山」という言葉があり、宇宙の真なる法を説いています。この文章については後日、親しき友人である禅僧のお話も伺いつつ紹介するつもりです。

「ブルー」はもちろん空の色、生き生きとした希望の色でもあります。

さらに「ブルース」の「ブルー」。ブルースは単なる音楽ジャンルではなく、魂の歌であり、愛の嘆きです。「ブルー」は、各地を奏で歩くトルバドゥール(吟遊詩人)やフォーク・シンガーの色でもあると、少なくとも僕は思っています。