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即興「峯と年輪」

優しい鹿たちの都、奈良。木々の下を穏やかに散歩できることも、ブルゴーニュの片田舎から出てきた僕らには嬉しいもの。この奈良で、おもてなし、楽しむこと、両方の心得をもつ場所があります。「旅館 松前」です。書や狂言の体験やお稽古、ヨガ教室も開かれているこの旅館は、コロナ到来後ゆっくりと転換期を迎えています。将来アート・レジデンシーになる可能性を秘めているこの場所で、僕らは滞在アーティスト第一号となりました。

この旅館の女将であり書家である、桃蹊こと柳井尚美さん。前進・変化を恐れない心を持つ彼女にとって、物事が柔軟に行くべき方向に進むことを、僕らも心から願っています。そして、長い滞在中にお世話になったスーパー番頭の不破さん(僕らは愛を込めて「フワリン」と呼びます)。来客が薄れた奈良で、本領が発揮できない彼の姿を目にするのは正直切ない気持ちでした。不破さんは、奈良の風景や鹿を撮ったビデオもYoutubeで配信していて、新曲「蝶と白太」をこの旅館で撮影した時に急遽カメラマンとして協力してくれました。彼も、もしやこれからはアーティストを撮ることが増えるのではないかと期待しています。

奈良でのビデオ・セッションですが、クラウドファンディングのリターンとして贈呈するために、桃蹊さんが二作品を書くことになっていました。明暗のトーンが際立った「蝶と白太」の次は、ちょっと「おふざけ」をしようということに。最初にあったテーマ「年輪」に加え、「峯」をイメージして即興しました。

桃蹊:書/リュドヴィック・ベー・アー:歌/武田洋子:ヴァイオリン/スティーヴ・エトウ:パーカッション